電気基礎/電気用語

力率とは何か6項でわかりやすく解説(改善、良い/悪い、問題等)

これから電気に関わる
電気初心者の方は今後
「力率」という
キーワードをよく耳にするはずです。

電気と一概にいっても、その中には
多岐にわたる分野があります。

その分野の中でも力率は
交流、電力の分野になります。

特に電力会社から
工場・事業所や家庭への
電気の送電/給電に関わると
必ず出てくるキーワードです。

このページでは、
この力率とは何か?
力率に関連する事項を

できるだけ計算式を使わず
初心者でも、どういったものなのか
概要がわかるように説明しています。

1.力率とは

電気には
直流と交流があります。

直流と交流の波形直流と交流の波形

力率は交流分野で
語られるキーワードであり
直流は関係ありません。

直流では、電源から出力した
電流は負荷で電力として
消費されます。

交流では、理由は後述しますが
電源から負荷へ出た電流で
負荷で消費される電力と
消費されず電源に戻る電力があります。

力率は簡単にいうと
電源から出力された電力と
負荷で消費された電力の割合です。

力率=消費された電力÷出力された電力

となります。

直流では、戻ってくる電力はないので
力率という概念がないわけです。

この電源から出た電力を皮相電力
消費された電力を有効電力
電源へ戻った電力を無効電力といいます。

交流では、なぜ戻る無効電力が
発生するかを簡単に説明すると

負荷には抵抗分の他に
コンデンサやコイルなどの
リアクタンス成分があります。

(リアクタンスについては
以下のページをご参考ください。
リアクタンスとは)

負荷にリアクタンス成分があると
交流では下図のように
電圧と電流に時間差(位相差)が
発生します。

リアクタンスによる電圧/電流のズレリアクタンスによる電圧/電流のズレ

電力は電圧×電流です。

時間差(位相差)があることで
電力にプラスとマイナスが
できてしまいます。

下図は、矢印の区間で
プラスとマイナスの電力を
表現したものです。

ズレによる電力にプラスとマイナスズレによる電力にプラスとマイナス

マイナスの区間は
電圧電流の極性が違い
プラスの区間は同じです。

リアクタンス成分の電力波形は
下図のようになります。

リアクタンス成分の電力波形例リアクタンス成分の電力波形例

それでマイナスの電力が
電源へ戻るのです。

負荷が
抵抗分だけで時間差(位相差)が
なければプラス電力しかなく
電源へは戻りません。

抵抗分の電気波形抵抗分の電気波形

このページは力率とその関連に
ついて説明するページなので
これだけの説明にとどめます。

このことについては
前述した3つの電力である

皮相電力、有効電力、無効電力の
説明と共に以下のページで
もっと説明していますので
ぜひ、読んでみてください。

皮相電力、有効電力、無効電力とは

2.力率が良い、力率が悪いとは

力率に関連してよく出現する
キーワードとして

「力率が良い」
「力率が悪い」

があります。

力率が良いとは前述した

力率=消費された電力÷出力された電力
(以後は力率=有効電力÷皮相電力)

の値が高いことになります。

力率が悪いとは
力率=有効電力÷皮相電力の値が
低いことです。

つまり戻ってくる電力である
無効電力の全体の割合が
高いということになります。

力率は例えば
0.8とか80%という値に表され
1や100%に近い方が
より力率が良いことになります。

以下に電気機器の力率の
参考値を記載しておきます。

①白熱電球:100%
②洗濯機:70~80%
③そうじ機:60~70%
④大型モーター:70~85%
⑤アーク溶接機:30~40%
⑥アイロン:100%

リアクタンス成分がない機器は
力率100%ですが、

大型モーターやアーク溶接機などは
コイル特性で動作する機器で
リアクタンス成分が
あるので力率が低くなります。

今はもう使うことは減りましたが
水銀灯を点灯させる安定器には
高力率型と低力率型があり

85%以上を高力率として
います。

3.力率が悪いと何が問題か

力率が悪いということは
負荷で消費されない無効電力の
割合が高いということです。

消費されない(失われない)わけだから
力率が悪くてもいいのではないか?

と考えてしまいそうですが
力率が悪いと次の問題があります。

力率が悪いと使わず戻ってくる
電流を多く電源から出力することに
なります。

トータルで皮相電流(皮相電力)
も大きくなります。

わかりやすいよう極論で例えると
力率20%の電気機器で消費される
電流が100Aだとすると

電源からは500Aの電流が出力
することになります。

この大きな電流でも使える
電線や電源となるトランスなどの電源、
その他の機器は大型となり
コストが上がります。

ブレーカーだって定格電流が
3Aと300Aだと大きさも価格も
まるで違いますよね。

このように、力率が悪いと
色々な無駄なコスト、ロスが
発生するのです。

避けるため力率は高い(良い)方が
いいわけです。

4.力率の改善

力率は悪いときは、そのまま放置せずに
改善させることをします。

改善のために進相コンデンサ
使います。

進相コンデンサは
力率改善コンデンサや電力用コンデンサと
呼ばれることもあります。

身近な設置例を紹介します。

キュービクル式高圧受電の場合

大きな工場、店舗の傍や駐車場などに
身近な場所で下写真のような
鉄箱が設置されていることが
よくあります。

キュービクル例:日東工業HPよりキュービクル例:日東工業HPより

これは
電力会社から6600Vの高圧受電する
電気設備です。

内部のトランスで200Vなどの低圧に
変圧します。

このキュービクルの中に
下写真のような
進相コンデンサを設置して力率を
改善しています。

高圧進相コンデンサ:三菱電機HPより高圧進相コンデンサ:三菱電機HPより

下図はあるキュービクルの
単線結線図の一例です。

受電設備内の進相コンデンサ:単線結線図受電設備内の進相コンデンサ:単線結線図

赤で囲んだ記号は
進相コンデンサです。

低圧受電の場合

柱上変圧器柱上変圧器

上写真のようなよく目にする
柱上変圧器は6600Vを200Vなどの
低圧に変圧しています。

その低圧をそのまま工場内の
引き込むことはよくあります。

その場合、下写真のように
工場内のブレーカーに
進相コンデンサを設置します。

低圧進相コンデンサと設置例低圧進相コンデンサと設置例

このように力率改善の
取り組みは身近なところで
行われています。

進相コンデンサで改善する理由

負荷にコンデンサやコイル(インダクタンス)の
リアクタンス成分があると
電圧と電流の位相(時間)がずれることは
前述しました。

それが
力率が悪くなっている原因で、
一致するほど力率は良くなります。

コンデンサの場合は
電圧に比べて電流が進み
コイルの場合は逆に
電圧に比べて電流が遅れます。

この違い利用して
わざと進相コンデンサを設置し、
コンデンサ分を増やして
一致に近ずけているのです。

負荷にはモーターなど
コイルを含むもの方が多いので
コンデンサ分の方を増やしています。

この位相についても
既に紹介した以下のページで
より解説していますので参考ください。

リアクタンスとは

5.力率割引

前項で力率改善について
書きましたが、力率を改善すると
力率割引」といって
電気料金を割引してもらえます。

電気を供給する電力会社にしてみれば
力率が悪いと使われない電流を
ただ流していることになり

そのために、電線やトランスなど
設備費などコストが高くなります。

ですので、料金を多少安くしてでも
力率を改善してもらうわけですね。

逆に力率が悪いと電気料金が
割増します。

割増/割引の境目は

力率85%が境目となっています。

85%なら割増も割引もなく
85%より上なら1%上がるごとに割引
85%より下なら1%下がるごとに割増
となります。

割率は?

割引率や割増率は
契約している内容で変わります。

また、動力(三相交流)だけに
適用されます。

低圧受電の場合

前述した柱上変圧器で
200Vなどの低圧に変圧した
動力を使っている場合、

85%は変化なし

85%を1%上がるごとに
基本料金を5%割引

85%を1%下がるごとに
基本料金を5%割増

高圧受電の場合

6600Vの高圧を
そのままキュービクル等で
受電している場合、

85%は変化なし

85%を1%上がるごとに
基本料金を1%割引

85%を1%下がるごとに
基本料金を1%割増

6.力率計算

最後に力率の計算式を
紹介だけしておきます。

力率は皮相電力における有効電力の
割合でしたね。

力率は有効電力÷皮相電力となり
無効電力が0で全て有効電力なら
最大で1になります。

皮相電力の2乗=有効電力の2乗+無効電力の2乗

つまり

皮相電力=√(有効電力の2乗+無効電力の2乗)

力率=有効電力÷√(有効電力の2乗+無効電力の2乗)

となります。

7.最後に

このページでは、できるだけ
計算式を使わず力率がどのようなものか
分かってもらえるよう努めました。

力率が何なのか、ざっくりでも
分かってもらえ、

「力率」のキーワードがでる
会話の意味が分かるようになれたなら
嬉しく思います。

初心者のための講座へ-以下の画像をクリック!
設備保全入門のバナー